週刊タイガー 2009年4月

週刊タイガー


2009年4月 第4週

「オバケちゃん」
「宇宙人」
森の中はユーモアたっぷりな生き物がたくさんいてはります。
ちょうど今時分、出会える2種類の植物を紹介させてもらいまっせ。

まずは、ほとんど日が射さず、暗ーい場所で
「あら、見てたのね~、ドロん、ドロドロ~」と、見つけてしまったオバケちゃん。

暗い場所に白い洋服が目立って、ほんまオバケみたいで笑えるやん。
魚の鱗みたいなのが茎についていて、真っ白というより透明感のある銀白色ですな。

顔みたいに突き出している形が竜みたいに見えるのと、
銀白色の姿から、和名は銀竜草やて、そのまんまですな。
イチヤクソウ科でギンリョウソウと言うねん。

ちなみに、植物やねんで!
竜でもないしオバケでもあれへんで、ありゃどっちも架空の生き物か。

考えてみたら現代に生きるワシらは、架空の生き物の竜もオバケもほんまは知らんはずや。
昔の人が竜はこんな形やと絵に残してくれたんで、そうか竜なのねと知識としてあるのですわな。

オバケはというと、子供の頃に悪さをしたら押し入れに押し込まれて、
怖いもんが出てくるよ~と躾けの口実に使われたのがオバケかいな。
ワシ、まだほんまもんを見た事あれへんで。

けど、不思議なもんで此のギンリョウソウを見たら、
竜にオバケでそのまんまや~と、見た事ないくせに妙に納得してまうのが、
摩訶不思議な事ですな~。

そうそう、此の植物は葉緑体を持ってへんから自分で光合成出来へんねん。
菌類に寄生して栄養分をもらいはるそうな、他力本願な植物ちゅう事かいな。

たいてい群生してて、ドロん、ドロドロ~と森へ来た人を驚かしてくれる、
やっぱしオバケちゃんですワ。

もうひとつは、春といえばシダの新芽が展開していく様子が楽しみのひとつですな。
これだけウラジロが群生してて皆、アルファベットのYの字に新芽が開いていると、
宇宙人に出会った気分になれまっせ。

「ワレワレ ハ チキュウ ニ ヤッテ キタ」

聞こえる、聞こえる!聞こえてくるで。
オバケに宇宙人、森の中は楽しいなぁ~。

え?一番笑えるのがタイガーの顔ってか。
はいな、ワシは虎犬の妖怪や。
「何か、ようかい?」。



2009年4月 第3週

「大きな擬態」
「小さな擬態ー見つけてや」
じゃララーン~♪じゃララーン~♪

ダブルギターで演奏といえば、ぴんから兄弟ですな。
かなり古くて此の話題について来れる方、何人いてはるんやろう?

ちなみにワシもまだ生まれてへんねんけど
マイご主人さまが「女のみち」ちゅう歌をダミ声で歌ってくれたんや。

さてさて今週はダブルギターではなくて、だぶる擬態のご紹介ですねん。

散歩してたらな、なんちゅう大きなフジの樹があるんやとビックリしてん。
え~っ、フジって樹やったん?ちゃうちゃう、違いますがな。

マメ科の仲間でツル性のはず、スゴいがな、さすが屋久島、
ガジュマルの樹にフジが巻き付いてフジの花が満開ですねん。

ガジュマルといえば、運良く他の樹の上で発芽をして、
根っこを垂らして元の樹の太陽光を奪い、やがて乗っ取ってまう樹で有名ですわな。

その乗っ取り屋さんの樹に、ジャパーン~豪華絢爛これぞニッポンの春~
というフジの花が、おもいっきり目立ってますねん。

乗っ取る気はないにしても、どう見てもフジの樹や。

これも擬態のひとつやろか。
ガジュマルさん、負けましたな、トホホ。

ってなフジの花の迫力に酔って、花見をしていたら花の匂いのキツい事。

その匂いに誘われてハナアブが仰山来てるで、
さて花の写真を撮影しようとカメラを構えたら、花の横の枝が微妙に動いてるねん。

よくよく見ると枝やあれへん、何かの幼虫やん、枝そっくりで擬態してはるワ。
大きな擬態に小さな擬態。

じゃララーン~♪じゃララーン~♪
ダブルギター→ぴんから兄弟→女のみち、って事かい?

あぁ、発想が貧しいがな。
もっと、あれへんのかいな!高尚な発想が!

「私が捧げた、その人に~あなた~だけよと、すがって泣いた~
ウブな私がイケナイの、2度としないは恋なんか~これが、女の道ならば~♪」

なんちゅう歌詞や、けどおもろいがな。

ワシも弟分の猫のコヨージと兄弟でダブルギターしてみよか~、
「ボコ、ボコ」おっと、猫パンチくらったで、『ぎたい~』

ちごた、痛い~。



2009年4月 第2週

「小さなブーメラン」
「侘び寂びブーメラン」
春の散歩は気持ちよろしいですなぁ~。
気分がピカピカになりまっせ、

「ピカピカの1年生~♪」歌まで出て来たがな。
毎年ワシ、歌ったんとんで!

はいな、そういった今日この頃ですな~。
ピカピカ気分のワシが何や春色のピカピカ光っているものを発見しましたぞ。

それは、ヤクシマオナガカエデの種子やねん。
はいな、樹の葉っぱから垂れ下がっている種子が何らかの事情で落ちたのですな。

大きさは3ミリあるかないか、でもちゃんとカエデの種子の形していてな、触ると柔らかいねん。
もう辺り一面に落ちていて、小さな緑のブーメランだらけや。

屋久島の固有種と言われているから、
世界で此処だけにしかない、小さな緑のブーメランという事ですなぁ。

けど、なんで此の未熟な種子が、仰山落ちているんやろうか。

名探偵タイガーが推測するとやなぁ~、ワシの天敵である「お山ん大将」が
柔らかい若葉を食べる際に引きちぎって落としたんとちゃうか。

それとも、カエデは漢字で書くと楓やから風で落ちたんか、
いやいや~、こないにまとまって落ちんやろ。
たぶん、犯人は「お山ん大将」かもな。

もう少し歩いてたら、今度はピカピカの反対語は何というやろか、
ボロボロかいな、いやサビサビか。

そや!ええ言葉が浮かんだで!
侘び寂びのある完熟したヤクシマオナガカエデの種子が落ちていたぞ。

「わかるかな~わかんねぇだろうな~」

ほんま、此れ、わかるやろか?
黄金色した苔の胞子体ばかり目立ってて、けど綺麗やな~、タマラん。

タマラん美しさの下に、侘び寂びのある種子が落ちてますやろ。
果たして発芽するのかどうかは、これからのお楽しみやなぁ。

上手く発芽したら、またピカピカの新生児に出会えるかもな。
春は楽しみが多いですな、しっかり頑張りや~!

おや、「おまえもな~」って、聞こえたで。



2009年4月 第1週

「ナナフシの」
「脱皮現場」
春の散歩は驚きがいっぱいありますで。
今週はたまたま見つけたナナフシの脱皮やねん。

「家政婦が見た」ではなく、「虎犬が見た」スゴい脱皮現場や。

写真を見て分かるやろか?
透明な脱ぎ捨てた皮のスゴい事!

木の枝に落ちんようにグルグル脚を巻き付けて、
そこから脱出するかの如く、新しい体が再生してはるのですな。

どないなってるんやろ。
こんなに繊細なスマートボディやのに脚の先までスルリと脱ぐ力というか、技というか。
まるで出産みたいに大変な事なんやろな、不思議や。

ナナフシは7つ節があるという訳と違て、
たくさんの節を持つ昆虫という意味の名前らしいですな。
たくさんの節があるから、他の昆虫よりも脱皮が難しいんかなぁ。

毎度毎度おなじみのフレーズやけど、
「変態~止まれ、イチ、ニイ」の変態やのうて、
セミと同じでナナフシはサナギの時代がないのですな。

卵→若虫→成虫となる不完全変態と呼ばれる成長の仕方で、
孵化した時から親に似ているんやて。

だいたい4回~9回も脱皮を繰り返すそうな、
すごい数やなぁ~、毎回こんな大変な脱皮を経験しはるんやなぁ。

そういうたらワシの家の近所で見るナナフシで、緑色のと茶色のとがあるんや。

ナナフシの種類によって違うんかなと思ててんけど、どうもちゃうみたいやで、
脱皮を繰り返すうちにオスは茶色になってメスは緑色のままなそうな。

という事は今回の脱皮してはるのは、ワシと同じオスというこちゃな。

たまたま脱皮現場を見ていたら、風がきつくてな、脱皮最中に枝が大きく風で揺れるねん。

かえって迷惑かも知れんけど枝を押さえ、
下にツワブキの葉っぱを敷いて「頑張れ」と励ましててん。

けどな、結構な時間がかかってワシも疲れて来たんで途中で「お疲れ」と帰らしてもろてん。
薄情な奴ちゃ。

その薄情なワシが白状しますと、ワシも表面的には脱皮したんやで。
虎模様の毛皮が、冬仕様から春夏仕様に生え変わったんや。

表面だけでは、いけませんなぁ~、要は中身。

さて、新しいスタートの春ですな。
皆さんも心の脱皮を試みてや~。



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