屋久島路をゆく
屋久島には、様々な道があります。 畑へと続く農道、山へと入っていく林道、集落の中を縫う細い路地。 風の通り道、潮の通り道、動物達の道、歴史の通り道・・・。 「屋久島路をゆく」では、この地で培われてきた自然と人との関係、知恵や文化を見つめます。 写真/文:ネイティブビジョン 大野 睦 編集:屋久島リアルウェーブ 掲載は2004年6月をもって終了いたしました。現在はバックナンバーをご覧頂けます。 |
2004年6月 第4週


屋久島路をゆく、最終回は「屋久島路をゆく」です。 1993年12月、屋久島は日本で初めての世界自然遺産として登録されました。 以後10年余り、島には様々な問題や課題が投げかけられてきました。 うまく解決を果たしたものもあれば、そうでないものもあります。 この6月、台風4号が屋久島を襲いました。 縄文杉への入口にあたる荒川登山口駐車場は崩壊し、 人気の高い白谷雲水峡への入山ルートは寸断されました。 屋久島は産業の約6割を観光に頼る島、実に多くの人々に衝撃を与えました。 この台風が残した爪跡を癒すのは、容易ではありません。 けれども台風は、自然の摂理の中で生まれているもの。 破壊をもたらす一方で、多くの恵みをも生き物達に与えています。 様々な制約やしがらみの中でがんじがらめとなり、 現状を打破するのが難しかった10年分の課題。 この台風は、その有無を言わさぬ貫通力で、 それらを打ち破ろうとしてくれているのかもしれません。 土砂崩れで生まれた空間の中に新しい命達が芽吹くように、 ピンチをチャンスに変えることが出来る者達には、 この混乱の中にも光が見えているのかもしれません。 屋久島路をゆく。 この台風がもたらしたもう一つの意味に気づける者が、 これからの屋久島路を歩む者であって欲しいと思います。 |
2004年6月 第3週


今回の屋久島路は、「急坂のある風景」です。 集落の中を歩いていると、時折、驚くほどの急坂に出くわすことがあります。 歩幅の狭い階段が連なり、手すりがないと怖いような生活道路。 本当に進入していいんだろうか?と躊躇してしまうような急勾配の車道。 これも、宅地を山に求めず、森を平地にならすこともなく、 自然のあるがままの姿を尊重してきた 屋久島らしい表情のひとつと言えるでしょう。 「足が言うことをきかなくなったらおしまいだもの」 笑いを交えながら歩く人々の口からは、 道に対する不平の声は聞こえてきません。 捨て去ってはいけない屋久島らしさとは、 一見不便そうに見えるものの中にこそ、存在しているのかもしれません。 |
2004年6月 第1週


今回の屋久島路は、「隣人の気配」です。 打ち寄せる波を眺めながら砂浜を歩いていると、 時折足元に、動物の足跡を見つけることがあります。 波や風の力によってすぐに消えていってしまう小さな足跡、 クッキリ残っているのは、歩いてからまだ間もないという証拠。 「どんな動物かな」「何をしに来たのかな」 足跡を見つけて色々な想像をするのは、楽しいひとときです。 ぬかるみの道に残る、鹿の足跡。 雪原を横切って行った、猿達の群れ。 砂浜に刻まれたかぼそい鳥達の足跡に、 キャタピラのような、ウミガメの重厚な足跡。 時を別にして同じ場所を歩く、様々な生き物達。 コンクリートやアスファルトに塗り固められた都会では、 こういった隣人達の気配に気がつくことはほとんどありません。 ぬかるみや雪原の足跡は太陽の力で、 砂浜の足跡は風や波の力で、 また元通りの姿に戻って行きます。 足跡に気がつく機会が多いということは、 それだけ自然のキャンバスが豊かに残されているということなのですね。 |
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