世界遺産

世界遺産


1.世界遺産とは、国際条約である「世界遺産条約」に基づくものです

「世界遺産条約」とは、1972年に第17回ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)総会で採択された条約で、正式名称は「世界の文化遺産および自然遺産の保護にかんする条約」といいます。
この条約は、これまで相反するものであると捉えられてきた自然と文化を、同じ条約の元で国際的に保護しようというものです。


2.世界遺産には、文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類があります

「複合遺産」とは、自然と文化の両方の価値を有するもので、本来自然と文化は互いに補い合うものである、という考え方に基づいています。また、複数の国にまたがる遺産というものもあります。国や民族を越えて、地球の自然や文化を保存し未来へ引き継ぐというのが、世界遺産条約の考え方なのです。


3.世界遺産は、これだけあります

世界遺産は、世界全体で合計1,000件以上あります。
世界遺産条約締結約国数は、190か国超に及びます。(2019年現在)


4.世界遺産登録地は、こうやって決まります

世界遺産への登録は、その遺産を所有する国がユネスコへ登録を申請する、という形で行なわれます。ユネスコという偉い機関が世界中を見渡して、コレとコレを世界遺産にしよう、と決めるのではありません。ですから、どんなに素晴らしい文化や自然であっても、所有国が申請しない限り世界遺産にはなれないのです。世界遺産になると、所有国にはその遺産を守る義務が生じますから、遺跡保護に金を使いたくない国や、保護したくても金がない国はあまり申請しないという傾向にあります。これは見直すべき世界遺産制度の一面であり、度々指摘されていることでもあります。
それはさておき、世界遺産への登録方法を記してみましょう。


世界遺産に登録する第一前提として

まず所有する国の法律で保護されていなくてはなりません。1998年に日本が「古都奈良の文化財」を登録する時、宮内庁所有ということでこれまで文化財指定を受けていなかった正倉院を、わざわざ国宝に指定し、敷地を史跡に指定したことは記憶に新しいと思います。しかし、国宝になったのは正倉院の建物のみで、内部の文化財は依然宮内庁所管ということになっていますが。


推薦国が自国の自然もしくは文化財を推薦すると、

まずユネスコ世界遺産センターが、提出された書類を見ます。その内容が不十分である場合は推薦国に差し戻され、十分であると判断されれば、文化遺産は ICOMOS(国際記念物遺跡会議)またはICCROM(文化財の保存及び修復の研究のための国際センター)に通達、自然遺産は IUCN(国際自然保護連合)に通達されます。そこで世界遺産委員会に推薦する価値を有しているのか、世界遺産の登録基準(後述)と照らし合わせるなどして審査し、審査結果を世界遺産ビューロー会議に提出します。


ビューロー会議

毎年6月頃にパリで開催され、推薦物件を審査し、以下の4つに区分します。
1)委員会に登録を推薦する物件
2)委員会に登録を推薦しない物件
3)書類の内容不足など少々問題点があり、改善を推薦国に求める物件
4)より詳しい情報や調査などが必要なため、推薦を来年以降に延期する物件
このうち、3)に区分された物件は、同じ年の11月頃に開催される臨時ビューロー会議までに不備が改善されていれば、委員会に推薦されます。改善されていないと、推薦されません。


そして12月頃には世界遺産委員会が開催されます

ビューロー会議の結果をもとに物件を以下の3つに区分します。
1)世界遺産リストに登録する物件
2)世界遺産リストに登録しない物件
3)審議を来年以降に延長する物件
このうち、1)に区分された物件が、世界遺産となるのです。


5.日本の世界遺産は、これだけあります

名称登録年分類
法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)1993文化
姫路城(兵庫県)1993文化
屋久島(鹿児島県)1993自然
白神山地(青森県、秋田県)1993自然
古都京都の文化財(京都府、滋賀県)1994文化
白川郷・五箇山の合掌造り集落
(岐阜県、富山県)
1995文化
原爆ドーム(広島県)1996文化
厳島神社(広島県)1996文化
古都奈良の文化財(奈良県)1998文化
日光の社寺(栃木県)1999文化
琉球王国のグスクおよび関連遺産群(沖縄県)2000文化
紀伊山地の霊場と参詣道(奈良県、和歌山県、三重県)2004文化
知床(北海道)2005自然
石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県)2007文化
平泉-仏国土(浄土)を表す建築・
庭園及び考古学的遺跡群(岩手県)
2011文化
小笠原諸島(東京都)2011自然
富士山-信仰の対象と芸術の源泉(山梨県、静岡県)2013文化
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、山口県、岩手県、静岡県)2015文化
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築への顕著な貢献-(国立西洋美術館=東京都)2016文化
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県)2017文化
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県、熊本県)2018文化


6.屋久島のどういった点が評価されて世界自然遺産になったのでしょうか

屋久島は、島の中央部に九州最高峰の宮之浦岳を主峰とする1000mを超える峰々がそびえ、「洋上アルプス」とも呼ばれる素晴らしい山岳景観を呈し、また、亜熱帯から冷温帯までの多様な植生の垂直分布や樹齢数千年におよぶヤクスギなど特異な森林生態系を有しています。これらが評価され、1993年12月、日本ではじめての世界自然遺産として、世界遺産条約に基づき世界遺産リストに登録されました。
また、これだけ原始の自然が残った状態の中で人々も普通に暮らすことが出来ているという、「人と自然の共生」のモデルとなりえる地である点も、屋久島が高く評価されている重要なポイントです。


7.屋久島まるごと全部が自然遺産登録地なのではありません

屋久島は世界自然遺産に登録されたので、「もう大丈夫」でしょうか?
自然遺産に登録された場所は、実際は島の1/5程度なのです。


8.自然遺産登録後、島の自然はどう変わりましたか

皮肉なことに、世界遺産登録がされたことで屋久島は以前よりもずっと自然破壊への問題に悩まされるようになりました。
世界遺産登録直後のGWには、実に従来の2倍もの観光客が訪れており、その後は年々減ってはいるものの、やはり遺産登録前に比べるとかなりの数の観光客が島を訪れています。


登山道の荒廃

奥岳への登山口までが容易に車で行けるようになった為、昔は最低2泊3日かけないと行く事のできなかった縦走も現在では1泊2日で行けるようになり、登山者数も昔に比べて大幅に増え、その結果、登山道の部分だけが弱り、雨で削られ、土砂が流れてしまうようになりました。登山道の荒廃はいまも確実に進んでいます。


縄文杉 展望デッキ

屋久島に初めて訪れる観光客の一番人気はやはり現在でも縄文杉です。過去、縄文杉の根元が大勢の観光客の登山靴のスパイクで踏み荒らされた時期がありました。現在は、縄文杉を痛めない為にと木製の展望台デッキが設けられ、縄文杉を直接触ることはできません。このデッキは、入山規制などのない状況の中では、どうしても必要なものだったと思いますが、自然の中の風景にそぐわないという意見も多く聞こえてきます。


ヤクスギランド

ヤクスギランドの中の散策路は、子どもやお年寄りでも安心して歩けるようにと木製や石製の歩道が敷き詰められています。しかし、歩道上邪魔な木の根はカットされてしまっています。屋久島の自然はものすごい回復力を持っているので、少しばかり木をカットしてもすぐもとに戻る、ということなのかもしれませんが、ありのままの自然を見る為にはるばるやってきた人々の目にはどう映っているのでしょうか。


白谷雲水峡

白谷雲水峡へ行く為には、宮之浦の集落から、林道を10数キロ車で登らなくてはなりません。今までこの道は、でこぼこのジャリ道で、車のすれ違いもぎりぎり出来る、というミニマムの道路でした。その為、道路はゆっくり運転しなくては危ないので、おのずとまわりの風景をのんびり眺めながら、「ああ白谷雲水峡とは本当に山奥にあるのだなあ」と実感しながら登ることができました。
いま、白谷雲水峡へと延びるこの道は、片側1車線づつで大型観光バスでも快適に通ることができる立派なアスファルト敷きの道路に少しづつ姿を変えています。白谷雲水峡の奥には、もののけ姫の舞台にもなり、日本中の人々を感動させた素晴らしい手つかずの自然が残されています。これからの保全方法が心配されます。


世界遺産調査団

世界遺産となった物件は世界遺産リストに記載されると、世界遺産委員会の調査団によって保全状態などを随時調べられ、毎年の世界遺産委員会で発表されます。その時、特に抗しきれない重大な危機にさらされていると判断された場合には、「危機にさらされている世界遺産リスト」に記載されます。それらは現在世界で27件あり、世界遺産基金などの援助によって、状態の改善が試みられています。屋久島も例外でなく、観光客の増加により登山道が荒れていることなとが既に問題点として指摘されています。


9.私達ができること

屋久島カントリーコードという、島を守る為のマナーリストを知ろう!


動植物を採らない

珍しい昆虫や美しい植物が、私達の子供や孫の世代にも残せるように動物や植物を採集しないで下さい。
旅行中にゆっくり観察なさり、思い出話や美しい写真を撮ってお持ち帰りになられるのが1番です。


野生動物にエサをやらない

野生動物は、人間に餌を貰うことで人を恐れなくなり、人里に降りてきて田畑の作物を荒らすようになります。そうなると今度は害獣として駆除、つまり殺さなくてはならなくなってしまいます。
私達が、猿や鹿に餌をあげた瞬間に、私達はその猿や鹿の子孫を殺すことに加担しているのかもしれないのです。野生動物にはエサをあげないで下さい。


ゴミを捨てない、ゴミは持ち帰る

投げ捨てをしたアルミ缶は、500年たっても分解されず地面に転がっているそうです。
アルミ缶はきちんとリサイクルをすれば、そのアルミ缶一杯分のガソリンと同じぐらいのエネルギーを産み出すことができます。 
ゴミは持ち帰り、分別して捨てましょう。


登山するときは登山届けを出す


キャンプは決められた場所でする

もし、毎年大勢の人が、好きな場所でキャンプを始めるとどうなるでしょうか?
ほんの少しづつのマナー違反が積み重なり、誰も加害者意識を持たないままに、自然は少しづつ少しづつ、汚れていきます。 
「ここでテントを張れたらな」と思える自然がそこにあり続けているのは、人間がその領域を侵していないからこそだ、ということに想いを馳せましょう。


決められた道を歩く

そうすることで、木の根を踏みつけてしまったり、土が流れてしまったりすることを少しでも防げます。


森の中ではたき火をしない

山火事防止とともに、木の根などを焼け焦がし、痛めてしまうことがないようにということです。


島の人々の文化や暮らしを尊重する

屋久島の素晴らしい自然を後世に残すべく努力されてきた島の方々に敬意を払いましょう。


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