世界遺産への登録は、その遺産を所有する国がユネスコへ登録を申請する、という形で行なわれます。ユネスコという偉い機関が世界中を見渡して、コレとコレを世界遺産にしよう、と決めるのではありません。
ですから、どんなに素晴らしい文化や自然であっても、所有国が申請しない限り世界遺産にはなれないのです。
世界遺産になると、所有国にはその遺産を守る義務が生じますから、遺跡保護に金を使いたくない国や、保護したくても金がない国はあまり申請しないという傾向にあります。これは見直すべき世界遺産制度の一面であり、度々指摘されていることでもあります。
それはさておき、世界遺産への登録方法を記してみましょう。

まず所有する国の法律で保護されていなくてはなりません。1998年に日本が「古都奈良の文化財」を登録する時、宮内庁所有ということでこれまで文化財指定を受けていなかった正倉院を、わざわざ国宝に指定し、敷地を史跡に指定したことは記憶に新しいと思います。しかし、国宝になったのは正倉院の建物のみで、内部の文化財は依然宮内庁所管ということになっていますが。

まずユネスコ世界遺産センターが、提出された書類を見ます。その内容が不十分である場合は推薦国に差し戻され、十分であると判断されれば、文化遺産は ICOMOS(国際記念物遺跡会議)またはICCROM(文化財の保存及び修復の研究のための国際センター)に通達、自然遺産は IUCN(国際自然保護連合)に通達されます。そこで世界遺産委員会に推薦する価値を有しているのか、世界遺産の登録基準(後述)と照らし合わせるなどして審査し、審査結果を世界遺産ビューロー会議に提出します。

毎年6月頃にパリで開催され、推薦物件を審査し、以下の4つに区分します。
1)委員会に登録を推薦する物件
2)委員会に登録を推薦しない物件
3)書類の内容不足など少々問題点があり、改善を推薦国に求める物件
4)より詳しい情報や調査などが必要なため、推薦を来年以降に延期する物件
このうち、3)に区分された物件は、同じ年の11月頃に開催される臨時ビューロー会議までに不備が改善されていれば、委員会に推薦されます。改善されていないと、推薦されません。

ビューロー会議の結果をもとに物件を以下の3つに区分します。
1)世界遺産リストに登録する物件
2)世界遺産リストに登録しない物件
3)審議を来年以降に延長する物件
このうち、1)に区分された物件が、世界遺産となるのです。
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